COP21 ~パリ協定が採択されるまで~
- 脱炭素の情報が知りたい
2024/07/11
昨今、カーボンニュートラルが騒がれていますが、皆さんはここまでの経緯をご存じでしょうか? 今回のコラムは、カーボンニュートラルが騒がれる発端となったパリ協定の採択までの流れを見てみましょう。
(1)1992年に採択された国連気候変動枠組み条約
地球規模での環境問題や持続可能な開発の実現が注目された始めたのは1992年(平成4年)6月3日から14日までの間にリオデジャネイロで開催された地球サミットからです。皆さんも当時12歳だったセヴァン・スズキさんの「直し方を知らないなら、壊すのはもうやめてください」という伝説のスピーチを覚えている方は多いのではないでしょうか?
出典:国連広報センター(UNIC TOKYO) Youtubeチャンネル
この国連環境開発会議で採択された宣言が「リオ宣言」です。リオ宣言は1972年の国連人間環境会議(ストックホルム会議)で採択された「人間環境宣言(ストックホルム宣言)」が背景にありますが、このストックホルム会議では、開発が環境汚染・自然破壊を引き起こすという先進国の主張と、未開発・貧困が最も重要な人間環境の課題だとする開発途上国の主張が対立していました。
そのため、1992年のリオデジャネイロで開催された地球サミットでは、先進国と開発途上国との間でのさまざまな対立を克服するための具体的方法について議論がなされました。その結果、各国や国際機関が遵守すべき行動原則である環境と開発に関するリオ宣言、同宣言を達成するための行動計画であるアジェンダ21などを採択するとともに、国連気候変動枠組条約・生物多様性条約の署名が開始され、持続可能な開発を進めることが、人類が安全に繁栄する未来への道であることが確認されました。
国連気候変動枠組み条約とは、大気中の温室効果ガスの濃度の安定化を究極的な目的とし、地球温暖化がもたらすさまざまな悪影響を防止するための国際的な枠組みを定めた条約です。1992年6月に開催された地球サミット直前の1992年5月9日に採択され、同地球サミットの場で各国が署名をしました。日本も1992年に署名、1993年に批准し、条約は第23条の規定により50ヶ国目の批准があった90日後に当たる1994年3月21日に発効をしました。
(2)1997年のCOP3で採択された「京都議定書」
これに伴い1995年から国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)が毎年開催されています。特に1997年に京都で開催されたCOP3 にて採択された「京都議定書」は皆さんも記憶に新しいところではないでしょうか。京都議定書は2020年までの温室効果ガス排出削減の目標を定める枠組みです。日本も2008年~2012年の期間(第一約束期間)において1990年度比で6%の温室効果ガス削減の義務が課されました。
京都議定書の大きな特徴は下記2点です。
①各国に削減目標に基づく温室効果ガスの削減義務が課されたこと
②この削減義務は、日本を含む先進国のみであったこと
特に②の先進国のみに削減義務が課されたことに関しては、この京都議定書の有効性を疑問視する声が後を絶ちませんでした。なぜなら1997年時点で中国・インドといった新興国を中心とした開発途上国の温室効果ガス排出量が急増していたからです。この点に異を唱えたアメリカは京都議定書に参加しませんでした。まさにアメリカおよび中国という温室効果ガス排出大国の2つが離脱するという残念な結果となってしまいました。
1997年 COP3(地球温暖化防止京都会議)本会議場
出典:全国地球温暖化防止活動推進センター ホームページ
ところで皆さんは、京都議定書の日本の削減義務が達成されたのか、されなかったのか、ご存知でしょうか?
環境省の平成26年7月1日第28回地球温暖化対策推進本部にて了承された「京都指定書目標達成計画の進捗状況の点検」を確認すると「5か年平均(2008年~2012年の5か年)では基準年比8.4%減となり京都議定書の目標(基準年比6%減)を達成することとなる。」と記載されています。しかしながら内訳をみると、下記のようになっていました。
①5カ年平均の総排出量 :基準年度比4%の増加
②算入可能な森林等吸収源による吸収量 :基準年度比9%の削減可能
③京都メカニズムクレジット :基準年度比9%の削減可能
したがって、①-②-③=8.4%の削減
つまり、総量では増えたが、森林の吸収と他国や企業からクレジットの購入を行うことで達成にこぎつけたという形です。
この結果に対して思うところはいろいろあると思いますが、総量が増えた大きな原因として東日本大震災による福島第一原発事故を発端とした火力発電の増加があります。現に産業部門と運輸部門に関しては排出量が減少したのに対して、家庭部門および業務部門(発電関連)の排出量が増加しています。特に業務部門は原子力発電所の長期停止に伴う電力排出量の悪化により、温室効果ガスの排出量が大幅に増えてしまいました。
(3)パリ協定の採択
京都議定書が2020年までの枠組みだったため、2011年に南アフリカで開催されたCOP17において京都議定書に変わる新たな次の枠組みの構築が動き始めました。この枠組みが目指すところは「全て国が参加する新たな枠組み」です。その後4年間をかけて議論され、2015年11月30日から12月13日までフランスのパリで開催されたCOP21にて採択されたのが「パリ協定」です。
パリ協定で採択された内容は大きく下記の2点です。
①世界の平均気温上昇を産業革命時比2℃を十分下回る水準に抑え、さらに5℃に抑える努力をすること
②全ての国(開発途上国を含む)に5年ごとに温室効果ガスの削減目標を国連に提出し、対策を進めることを義務付けたこと
ここで京都議定書とパリ協定の違いを見ていきます。一番大きな違いは、京都議定書は先進国のみを対象としていましたが、パリ協定は開発途上国を含むすべての国が対象となった点です。2021年1月13日時点で189か国・地域が批准しています。
もう1つ違う点は、京都議定書は削減率の達成を義務付けられており、達成出来ない場合は罰則(超過排出量の1.3倍を次の約束期間の削減義務に上乗せする)もありましたが、パリ協定では削減目標を国連に提出することを義務付け、その達成に関しては罰則を与えない点です。これは罰則による脱退を避ける目的がありますが、罰則がなくても目標を達成できるように5年毎に削減目標をレビューして、見直しをするような仕組みにしています。
日本も2016年に中期目標として2030年度までに2013年比26%の削減を掲げました。しかしながら、ヨーロッパやアメリカ、中国までもがこれまでの目標を見直し、先進的な目標を掲げた影響を受けて、2020年10月26日の菅内閣総理大臣所信表明演説にて、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すこと」を宣言しました。また、翌2021年4月22~23日に行われた気候サミットにて「2050年目標と整合的で、野心的な目標として、2030年度に、温室効果ガスを2013年度から46パーセント削減することを目指します。さらに、50パーセントの高みに向けて、挑戦を続けてまいります」と2030年の目標の上方修正をしています。
出典:2050年カーボンニュートラルに向けた日本の気候変動対策 環境省
これらはかなりハードルの高い目標ではありますが、地球温暖化の防止は待ったなしの状況です。今後ますます国策としてのカーボンニュートラルが進んでいきますが、弊社も少しでも貢献していきたいと思っています。
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