中小企業はこれからはじめる中小企業版SBT②
- CO2を算定したい
- 脱炭素って何からはじめるの?
- SBT認証支援
- 外部認証を取得したい
2022/11/15
パート1では、「中小企業版SBT」の概要と取得するメリットについてお伝えしました。パート2ではそこからより踏み込んで、「中小企業版SBT」の詳しい内容と具体的な目標設定の考え方・プロセスについて解説します。
中小企業版SBTセミナー
4.中小企業版SBT
ここからは「中小企業版SBT」について、より具体的にご紹介します。
そもそも中小企業とは、日本国内で言えば製造業では「従業員300人以下、もしくは資本金1億円以下のどちらかに該当すること」という基準があります。しかし、SBTは国際認証制度ですので、これとは基準が異なります。「従業員数は500人未満で、非子会社かつ独立系の企業であること」、この要件を満たしていれば「中小企業版SBT」の対象となります。
以下の表では、「中小企業版SBT」と通常のSBTを比較しています。大きく異なる点は、削減対象範囲と目標レベルの部分です。
通常のSBTでは、以下の3つが削減の対象となっています。
- スコープ1:自社で使う燃料によって発生するCO2
例)灯油・重油・軽油などを工場内で燃やした際に排出されるCO2
- スコープ2:自社で使う電力で発生するCO2
例)他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う間接的な排出(発電所などで輩出されるCO2)
- スコープ3:サプライチェーンで発生するCO2
例)自社で使う原材料の製造・輸送に関わるCO2、従業員の通勤や製品使用・廃棄に関するCO2の排出
ただしスコープ3に関しては、スコープ1から3の合計の40パーセントを超えない場合、つまりスコープ3の割合が少ない場合は目標設定の必要はありません。40パーセントを超えないかどうかを確認するためには、スコープ3を算定しないと判断ができませんので、基本的にはスコープ1から3を算定すべきというのが通常版のSBTです。
一方で、「中小企業版SBT」の削減対象は、スコープ1と2のCO2排出量です。自社で消費する電力、そしてガスや灯油などの燃料を集計していけば、CO2排出量の算定は比較的簡単にできます。
次に、目標のレベルについてです。通常版のSBTでは、スコープ別の目標は以下のようになっています。
- スコープ1と2は気温上昇1.5℃以下、少なくとも年4.2パーセントのCO2排出量の削減が必要
- スコープ3はWell below 2℃、少なくとも年2.5パーセントの削減が必要
これに対して「中小企業版SBT」では、スコープ1と2は気温上昇1.5℃、少なくとも年4.2パーセントのCO2排出量の削減という部分は共通しています。しかし、スコープ3は削減目標ではなく、算定もしくは削減をできればやってくださいという形です。目標を設定する時点では、スコープ1と2の算定のみで良いという部分で、「中小企業版SBT」は通常版SBTと比較してハードルが低くなっています。
登録にあたって必要な費用にも違いがあります。通常版SBTでは9,500アメリカドルが必要なのに対して、「中小企業版SBT」は1,000アメリカドルです。さらに、承認までのプロセスについても、通常版SBTは内容に関する審査があります。一方で、「中小企業版SBT」は目標を提出すると自動的に承認されて、SBTiのウェブサイトに掲載されますので非常にシンプルです。そういった意味でも、中小企業の皆様にも活用いただきやすい制度と言えます。
5.目標設定の考え方
「中小企業版SBT」の目標設定は、バックキャスティングアプローチで考えます。
よくある目標設定、いわゆるフォアキャスティングアプローチは現在やれることを積み上げていく手法で、どちらかといえば日本型の目標設定です。例えば照明をLEDに替える、太陽光発電を導入する、空調を入れ替えるなどを積み上げてCO2を何パーセント削減するというものですが、残念ながらこれでは5~10パーセント程度の削減にしかなりません。つまり、フォアキャスティングアプローチでは気温上昇を抑えられないということです。
一方バックキャスティングアプローチでは、パリ協定の目指すゴールである、気温上昇2℃以下もしくは1.5℃以下に抑える目標に基づいて取り組みを決めます。はじめに高い目標設定を掲げて、そこに至るためにどういったアプローチをしていくのかを考えるため、目標の達成度が高くなる傾向があります。
6.目標設定のプロセス
「中小企業版SBT」の目標設定は、次の5つのステップで進みます。
1)基準年を何年にするか
2)目標年を何年にするか
3)目標水準を何℃にするか
4)削減率を計算
5)削減対策を考える
それぞれ詳しく解説します。
1)基準年を何年にするか
「中小企業版SBT」では、2018年から2021年のいずれかが基準年になります。通常であれば一番近い年度を基準年にした方が、削減目標の難易度としてやさしいものが設定されます。ただし注意すべきなのは、ここ数年は新型コロナウイルスの影響でエネルギーの使用量が以前と比べ少なくなっているということです。これに当てはまる企業がそのままの状態で直近年を選ぶと、すでに減ったところからさらに削減を目指すことになり、エネルギーの使用量が標準に戻ったときに非常に大きな削減が必要になってしまいます。そのため当社でおすすめしているのは、2018年から2021年のCO2排出状況を一通り計算したうえで、どこを基準年にするのが妥当かを検討することです。
2)目標年を何年にするか
「中小企業版SBT」では2030年が目標年と決まっているため、他の選択肢はありません。
3)目標水準を何℃にするか
従来は2℃以下にするか、1.5度以下にするか、という選択肢がありました。しかし、2022年7月15日以降は、1.5℃度の一択しかなくなりました。
4)削減率を計算
通常のSBTでは、算定ツールに基づいて色々な計算をする必要がありますが、「中小企業版SBT」では毎年4.2パーセントの削減と数値が決まっています。例えば2019年度を基準年とした場合は、2030年まで毎年4.2パーセントずつの削減で合計46パーセントの削減という計算です。
5)削減対策を考える
他の企業がどういう目標設定をしているのか、以下の表で簡単にご紹介します。2022年7月15日まではWB(ウェルビロウ)2℃が認められていましたので、この内容で認証を受けている企業はたくさんあります。野心的な目標として、1.5℃を目標に掲げる企業もありました。それぞれ、スコープ1からスコープ3まででこのぐらい削減するという目標を設定しています。
パート2では「中小企業版SBT」の詳しい内容と具体的な目標設定の考え方・プロセスについて解説しました。パート3では「中小企業版SBT」の申請手続きについて詳しくご説明します。
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SBT申請サポート 中小企業のSBTドットコム (es-jpn.com)
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