設備ごとのCO2排出量算定②
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2022/11/13
前回は、CO2排出量の4つの計算ステップのうち、②設備のエネルギー使用量を確認する部分までお話しました。今回の記事はステップ③以降と、実際の計算方法について解説します。
ステップ③ 設備の稼働状況を確認(稼働時間、平均負荷率)
ステップ③では、設備の稼働時間と平均負荷率を明らかにします。
稼働時間は、電源をオンにしている時間を整理することから始めてください。例えば、9時から17時が営業時間で、定時と同じタイミングで設備を稼働している場合は、1日8時間となります。もちろん、定時より早く電源オンにしたり、残業があったりする場合には、現場にヒアリングしながら実態に即した稼働時間を把握します。
加えて、1年間に何日稼働しているのかも確認します。こちらも営業日に即して計算し、24時間365日動いている場合は、それに合致した数字を整理しましょう。この2つの数値から年間の稼働時間がわかります。例えば、1日8時間×250日であれば、エネルギーを使っている時間帯は年間2000時間であるということになります。
次に平均負荷率ですが、考え方としては「能力に対して何%の力で動いているのか」をベースにして数字を整理していきます。このとき、数字を推定する方法と、しっかり計測する方法の2パターンがあります。
ステップ②で紹介した空調の定格消費電力は、フルで運転している場合に使う電気を示しています。定格消費電力をもとに算定してしまうと、エネルギーの使用量を多く見積もることにつながります。結果として、空調の更新をした際に「実はそんなに多く使っておらず、あまりCO2使用量が減らなかった」ということになりがちです。
それを避けるためにも、平均負荷率は重要なポイントです。空調の動き方のイメージを下のグラフに示していますが、暖房の場合の動作を例として挙げています。緑の線が室温、オレンジの面積が電気の消費量です。緑の線が下がって室温が低くなると、空調が動き出して室温が温まります。ある程度温まったら空調が停止し、それに伴って気温が徐々に下がることを繰り返しています。
この空調の定格消費電力は700Wですが、700Wをずっと使っているわけではなく、実際には平均50%程度で動いています。このように電力の推移から平均負荷率をしっかり把握し、CO2排出量に誤算がないようにしてください。
ただし、平均負荷率の計測にはコストがかかる場合もあります。弊社で平均負荷率を計測した事例をご紹介すると、下の図のようにブレーカーの計測したいところに「クランプ」という計測機器を付けます。この機器で測ると電力消費量の推移がわかり、下のグラフでは平均負荷率は34%だとわかります。設備投資を誤らないために、計測のプロセスも大変重要なのです。
ステップ④ CO2排出量を算定
設備別のCO2排出量の計算は、以下の計算式で求めることができます。
例えば、5kWの定格消費電力のエアコンの場合、年間2000時間動いていて、平均負荷率は50%、電気の購入先の係数が0.0005tだとするならば、この空調1台からは年間2.5tのCO2が出ているということになります。なお、CO2の排出係数については、環境省のホームページの数字を参考にしてください。
今まで整理してきた数字を冒頭の一覧表に入れると、工程と設備の形式、能力、稼働時間、エネルギーの使用量、CO2排出係数、排出量、これらが設備別にわかります。これをグラフ化すると、比較的わかりやすく課題が見えてきます。
空調に投資しようかと考えていたが、成型機に手を入れないといつまでたってもCO2が下がらないといった気づきにつながります。そこから生産設備の更新計画を立てるなど、具体的な行動に結びつけていきましょう。
補助制度
ここまでの説明でお気づきの通り、CO2を設備別に把握する情報収集のプロセスはとても大変です。現場を回りながら1台1台の型式を拾っていくのはもちろん、仕様書を調べる、現場へのヒアリングを行うのも大きな負担となります。自分たちで行うのは非常に手間がかかるこれらのプロセスを、環境省の認定機関に依頼できる制度があります。
この「工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業」という補助金制度では、設備別のCO2排出量の算定に加え、その先の具体的な対策の提案も受けることができます。通称「シフト事業」とも呼ばれていて、令和3年度から始まった補助金です。
脱炭素促進計画を環境省の認定機関が作ってくれて、必要な費用の補助率2分の1、上限100万円が環境省から補助されます。CO2の排出量が50tから3000t未満であることが条件となっていますが、自社がこれに当てはまるかどうかも環境省の認定機関に聞けば判定してもらえます。
脱炭素促進計画を実施した事業所には、計画に沿った設備投資に対して3分の1、上限1億円の補助金があります。将来的に設備の更新も考えている方にとっては、有効活用いただける内容です。弊社も環境省の認定機関として活動しており、要件に当てはまるかどうかの確認や、その後の計画策定の支援も行っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
※環境省公開資料より抜粋しています。詳細については下記リンクをご参照ください。
https://shift.env.go.jp/outline
まとめ
設備毎のCO2排出量の計算方法と、計算をすることの重要性についてご紹介しました。設備仕様の確認や稼働状況・平均負荷率の調査については、社内だけで実施するには多くのマンパワーが必要です。ぜひ環境省の補助制度を有効活用しながら、脱炭素の活動を進めていただければと思います。
この記事を書いた人
田崎剛史
株式会社エネルギーソリューションジャパン 代表取締役 エネルギー管理士
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