【初級編】中小企業SBT認定取得、要るor要らない?!
- 脱炭素って何からはじめるの?
- コストを削減したい
- SBT認証支援
- 外部認証を取得したい
2024/09/04
近年、中小企業の認定取得が加速度的に進んでいるSBTですが、この記事では、SBTについてよく知らない、会社で取得することになったけど実は何なのかよくわからない、そんなSBT初心者の方に向け分かりやすく説明します。
SBT認定を取得ってどういうこと?
そもそもSBTとは何なのかというと、「Science Based Targets」の頭文字を取ったもので、日本語では、「科学的根拠に基づく目標」と訳されます。
この「科学的根拠」とは「パリ協定が求める水準」を指し、企業は認定機関であるSBTiが策定したガイダンスに基づきSBT目標を設定し、SBTiはこのガイダンスに適合していると認められる企業に対して認証を与えています。
すなわち「SBT認定を取得」したというのは、「科学的な根拠に基づいた目標を設定し、SBTiに適合していると認められた」ということになります。
因みにパリ協定とは、2015年にパリで開かれたCOP21で合意された協定で「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という目的で、全世界に共通する国際的な取り組みのことです。
※パリ協定が締結されるまでの流れはこちらの記事で解説しています。
SBT認定取得が進む背景を再確認
パリ協定では、全ての締約国に目標の策定・提出が義務付けられていて、日本政府も以下の方針を掲げています。
・2030年までに、2013年度比で温室効果ガスの排出量を46%削減する
・2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする
この政府方針を受け2020年ごろから大手企業を中心に、自社の温室効果ガス排出量の削減目標を設定・公表するようになりました。それと同時にSBTに参加する企業も増加し、2024年3月時点の日本企業の認定数は904社となり、そのうち704は中小企業が占めています。
参照:環境省SBT(Science Based Targets)について
中小企業版のSBT認定取得は、CO2排出量の削減範囲や検証手数料の低減など、大手企業が取得する通常SBTに比べ、比較的取り組みやすいとされています。
認定取得に取り組んだ中小企業の中には、大手取引先からの要請前に先んじて取得したり、要請を受けて取得したなど、取引先を意識しての取得動機が多く、取り組みやすさと同時に中小企業の意識の高まりを感じます。
しかし、取引先からの要請がないのに急いで取得する必要があるのか?せっかく時間とお金を割いて取得しても、過去の遺産になってしまうのではないのか?とお考えの方は、大手企業が取得に動いた流れをもう一度思い出してみてください。気候変動は地球規模での対策が必要であり、その流れは全世界を巻き込む大きな流れとなった今、止まったり後戻りするとは考えにくいのではないでしょうか。
ましてや大手企業の脱炭素目標は、サプライヤーである中小企業の協力なくして達成などありえないのです。
では日本国内でSBT認定を取得した企業の7割以上を占める中小企業は、大手取引先の目標達成の為だけにSBTに取り組んでいるのでしょうか?もちろんそういった企業もあるかもしれませんが、SBT認定を取得するメリットは取組みを進める自社にも多々あります。
SBT認定取得のメリットを確認
SBTのメリットを色々なサイトで調べてみると、どのサイトでもほぼ同様の項目が挙げられています。ここではESJが運営する中小企業のSBT.comより引用し、下記の主な5つのメリットについて確認します。
①優位性の構築
②光熱費・燃料費削減
③認知度向上
④社員のモチベーションアップ
⑤資金調達
①優位性の構築:CNに積極的な取引先へのアピール
ある大手取引先A社が、通常SBT認定を取得あるいは取得を検討していた場合、A社の削減対象範囲は、取引先である中小企業(Scope3)のCO2排出量も含まれます。その際、自社が中小企業版SBT認定を取得し、削減に向けた目標に取り組んでいると公表していれば、A社のCO2削減目標に貢献できることになり、中小企業版SBT取得をアピールすることで、新たな受注のきっかけとなるかもしれません。
②光熱費、燃料費の削減
SBT認定取得が、なぜ光熱費・燃料費の削減に?と思う方もいるかもしれません。確かにどのウェブサイトを見ても、このことについて触れているサイトは多くありません。それは、ESJが考えるSBT認定取得は、スタート地点にすぎず、脱炭素経営視点からエネルギー使用についても様々な対策や改善を行う必要があり、それに伴う光熱費・燃料費の低減を見越しているからです。
③認知度の向上
目標に向けて大幅な温室効果ガスの排出削減が達成できたら、その取り組みをプロモーションに活用するのはとても効果的ですが、この時もしSBT認定を取得していなかったら…勿体ないと思いませんか?
SBT認定企業への関心が高まっている昨今、大手企業はSBT認定を取得した中小企業の取引先を探しているかもしれないのです。せっかくカーボンニュートラルに取り組むのなら、自社がその取り組みを行う企業であるとPRしない手はありません。その取り組みがメディア掲載、国や自治体からの表彰対象になれば、その知名度は更に上昇すると考えられます。ましてSBTは国際認証制度ですから、その知名度や認知度は全世界に向けて広まることも夢ではないかもしれません。
④社員のモチベーションアップ
脱炭素化・カーボンニュートラルの実現は、会社全体で社員が一丸とならなければ進めることはできません。そのために社員のモチベーションアップは必須です。SBT認定を取得し社外に公表することにより起こり得る好循環は以下の通りです。
①削減目標達成のため、積極的な省エネ活動や提案、環境に配慮した製品作りなどの技術革新が起こる⇒②それらの取り組みが評価され企業価値が向上する⇒③更なる企業価値向上と目標達成に向け、社内の機運が高まる⇒④社員のモチベーションアップにつながる
このような好循環が生まれれば、経営者としては社員を表彰したくなるというもの。そこでイノベーションに目覚めた別の社員が「次の表彰は私が!」とプラス思考の嵐が巻き起こるかもしれません。
⑤資金調達
「SBTのメリット」で検索するとほぼ100%の確率で目にすることができるのが、この資金調達についてです。
金融機関によっては、脱炭素経営を進める企業に対し、金利や融資条件を優遇する取組が行われています。SBT認定取得の際などに設定した削減目標の達成状況に応じて、金利が変動する融資(サステナビリティ・リンク・ローン)などがそれにあたりますが、欧米に続き日本でも普及が進んでいます。
他にも、補助金申請の際にSBT認定を取得していることが申請要件になっていたり、資金調達とは異なりますが、自治体によってはSBT認定を取得する際の費用に補助金を整備している自治体があるなど、SBT認定は今後の企業活動を継続していくための大きな役割を果たしてくれることが分かります。
【結論】中小企業向けSBT認定の取得はメリットばかり!
これほどまでのメリットがありながらSBT認定取得に踏み出せない中小企業が多いのは、目標を達成できなかったら?認定取得をアピールしても目標達成出来なければ企業としての信用に関わるのでは?そもそも人員不足だ、など様々な理由から踏み出せずにいる企業の皆さんも多いでしょう。
しかし、あの時一歩踏み出しておけばよかったと後悔するより、一日も早く行動を起こし2030年までの時間を確保できれば、取組を進め目標達成に近付けることで更なる企業価値の向上が可能です。
2030年まで残り6年を切りました。まずはカーボンニュートラルのセミナーに参加したり、資料を取り寄せるなど情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。
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